フリーランスエンジニアのリアル|単価・稼働・継続率

この記事の結論

  • フリーランスエンジニアの「実態」は、単価・稼働・継続率の3つで見ると、それぞれ違う顔をしています。単価は上がり、稼働は減り、継続率にいたってはそもそも数字が存在しません
  • 掲載平均単価は78.5万円(2026年6月度/掲載408,133件)。12ヶ月分に直すと年商942万円ですが、ITエンジニア系フリーランスの実額平均年収は52å6.3万円(マイナビ2025年版/n=1,000)。掲載単価の6.7ヶ月分にしかなりません
  • 差の大部分は稼働です。平均月労働時間は135.4時間。フルタイム換算(月160時間)の**84.6%**にとどまります
  • 月商の振れ幅は、平均月商とほぼ同じ大きさです。高い時57.0万円/低い時12.8万円で、差は44.2万円。実額平均から逆算した平均月商43.9万円と、ほぼ同額の幅で毎月上下しています。低い時の金額として「0円」を挙げた人が32.4%で最多でした
  • 継続率・廃業率の公的統計は存在しません。「フリーランスは1年で3割が廃業する」といった数字がWeb上に流通していますが、一次ソースを特定できません。本記事はこの数字を使いません。代わりに正社員転向を検討している人が約25%(ファインディ/n=265)など、周辺の指標で近似します
  • 会社員と並べると、年収では下回り、時間単価では上回り、手取りの時間単価ではほぼ互角になります。独立で変わるのは金額の大きさではなく、時間の配分を自分で決められることです
  • 市場そのものは縮んでいます。掲載案件数は463,542件(2025年4月)から408,133件(2026年6月)へ12.0%減リモート案件は実数で17.2%減と、全体より速いペースで減っています
  • 一方でAI・DX関連案件は直近1年で約3.1倍コードの50%以上をAIで生成する層は、活用度25%以下の層より月単価が約10万円高い(ファインディ)という結果も出ています

「フリーランスエンジニア 実態」で検索すると、平均単価78.5万円という数字と、平均年収526.3万円という数字が、それぞれ別の記事で自信たっぷりに提示されています。どちらも本物の調査です。しかし単価78.5万円を12倍すれば942万円で、526.3万円とは400万円以上の開きがあります。

この差がどこから来るのかを説明せずに片方だけを見せるのが、この分野の記事の一番の問題です。単価の数字だけを見て独立を決めた人は稼働の現実に驚き、年収の数字だけを見た人は「思ったより稼げない」と判断を誤ります。両方が正しく、両方だけでは足りないというのが実態です。

この記事では、フリーランスエンジニアの実態を単価・稼働・継続率の3つの軸に分解し、それぞれ何がどこまで分かっていて、何が分かっていないのかを明示します。特に3つ目の継続率については、信頼できる数字が存在しないという事実そのものを扱います。

対象は、ITエンジニア・Webデザイナー・ITコンサルタントとして会社員から独立を検討している方、および独立して間もない方です。

この記事が扱う「実態」と、扱えない「実態」

数字の信頼度は同じではない

「実態調査」と名のつく記事は多くありますが、根拠として並べられている数字の性質はバラバラです。本記事では次の階層で扱い、下の層の数字は上の層の数字と同列に置きません

種類本記事での扱い該当する数字の例
A政府統計(悉皆・大規模標本)基準として使う就業構造基本調査(本業フリーランス209万3,700人)、民間給与実態統計調査(正社員平均545万円)
B業界団体・大手事業者の定点調査(標本設計と時点が明示)時点と標本数をセットで使うマイナビ(n=1,000)、ファインディ(n=265)、連合(n=1,000)、フリーランス協会白書
C求人プラットフォームの掲載データ集計**「掲載されている案件の平均」**として使う。個人の収入とは別物として扱うエン『フリーランススタート』(掲載408,133件)、レバテック市場動向
D出典不明・一次ソース特定不可の数値使わない「1年で30%が廃業」「3年で1割しか残らない」等

特に混同されやすいのがBとCです。Cは「いま市場に出ている案件の値札」であり、Bは「実際に人が受け取った額」です。値札と実売価格を同じ棚に並べてはいけません。

本記事が使わない数字

「フリーランスは1年で30%が廃業する」という数字について

この数字、および類似の「3年で◯割」「5年生存率◯%」といった継続率・廃業率の数値は、本記事では一切使いません。理由は単純で、一次ソースを特定できないからです。

フリーランスの継続率・廃業率を継続的に追跡した公的統計は、日本には存在しません。個人事業の開業・廃業は開業届と廃業届で把握されますが、これらは提出義務の運用が緩く、実際に仕事を辞めても廃業届を出さない人、逆に会社員に戻っても届を出さない人が多数います。国税庁の統計も申告者数であって、継続の実態を表すものではありません。

Web上で見かける廃業率の数字は、中小企業白書の法人企業の生存率を援用したもの、海外調査の翻案、あるいは出典を辿ると同じ記事に戻る循環参照のいずれかであることがほとんどです。

「分からない」と書くのは記事として弱く見えますが、分からないものを断定するほうが読者にとって危険です。本記事は継続率について、後段で周辺指標による近似を示すにとどめます。

単価|掲載78.5万円と実額526.3万円のあいだ

掲載単価は、実は上がっている

まず「値札」のほうから見ます。エン『フリーランススタート』の定点調査による平均月額単価の推移です。

時点平均月額単価掲載案件数リモート案件比率
2025年1月74.9万円
2025年4月74.6万円463,542件33.6%
2026年2月79.9万円
2026年4月77.2万円32.7%
2026年6月78.5万円408,133件31.6%

2025年1月の74.9万円から+3.6万円(+4.8%)。市場の値札としては上昇しています。

ところが、実際に働いている人の実感はこれと合いません。連合のフリーランス調査2025(n=1,000)では、「報酬が引き上げられていない」と答えた人が89.8%。収入満足度は満足26.0%に対して不満46.8%でした。

市場平均が上がっているのに個人の報酬は上がらない。これは矛盾ではありません。平均単価が上がるのは、低単価案件が市場から消えている場合にも起きるからです。掲載案件数が463,542件から408,133件へ12.0%減っていることと合わせて読むと、「単価が上がった」というより「安い案件が減って平均が持ち上がった」という説明のほうが整合します。

平均単価の上昇を「交渉すれば上がる」と読み替えない

定点調査の平均単価は、掲載されている案件の集合が変われば動きます。同じ人の報酬が上がったかどうかとは無関係です。

実際、連合調査では約9割が「報酬が引き上げられていない」と答えています。市場平均が+4.8%であることと、あなたの継続案件の単価が据え置かれていることは、両立します。

平均単価は「これから探す案件の相場観」としては有用で、「いまの案件の値上げ根拠」としては弱い——この使い分けが実務的です。

実額平均は526.3万円。掲載単価の6.7ヶ月分

次に「実売価格」です。マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2025年版」(2025年8月/n=1,000)によれば、ITエンジニア系フリーランスの平均年収は526.3万円。回答者の**前職正社員率は84.2%**で、大半が会社員からの転向者です。

2つの数字を並べます。

金額出典・性質
掲載平均単価 × 12ヶ月942.0万円エン(掲載408,133件の平均値札)
実額平均年収526.3万円マイナビ(n=1,000の実額回答)
− 415.7万円
実額を掲載単価で割ると6.7ヶ月分526.3 ÷ 78.5

「掲載単価の6.7ヶ月分」という読み替え

実額平均526.3万円を、掲載平均単価78.5万円で割ると6.7。つまり平均的なフリーランスエンジニアは、掲載単価どおりの案件に年6〜7ヶ月しか入っていない計算になります。残りの5.3ヶ月分は、案件がないか、単価が低いか、その両方です。

この分解はFLR-26(単価別・手取りシミュレーション)でも使っています。単価×12は年収ではない

差を生んでいる要因は主に3つあります。

  • 掲載単価は幅の上側で集計されやすい — 案件票は「60〜90万円」のようなレンジ表示が一般的で、集計の際に上限寄りの値が反映されがちです
  • 稼働月数が12ヶ月に満たない — 次のセクションで詳述します
  • 平均月労働時間が135.4時間 — フルタイム換算を下回る水準です。週5日フル稼働ではない層が相当数含まれます

時間単価で見ると、また違う絵が出る

月額で比べると差は絶望的に見えますが、時間あたりで見ると印象が変わります

指標時間単価算出根拠
ファインディ調査の平均時間単価5,319円Findy Freelance調査(2026年1月/n=265)。平均月単価は約80万円
掲載平均単価78.5万円 ÷ 160時間約4,906円フルタイム換算した場合の値札
実額平均526.3万円 ÷ 年1,625時間約3,239円月労働時間135.4時間 × 12ヶ月で除算

※ファインディの平均月単価80万円と時間単価5,319円から逆算される月稼働時間は約150時間。マイナビの135.4時間とは調査対象・設問が異なるため、両者を直接引き算しないでください

実額の時間単価は約3,239円。掲載ベースの時間単価5,319円のおよそ6割です。ただしこの3,239円という数字は、後段で会社員と並べたときに効いてきます。

常駐とリモートで、単価は逆転している

働き方別の単価も出ています(2026年6月度)。

働き方平均月額単価掲載比率
常駐77.5万円68.4%
リモート79.6万円31.6%

リモート案件のほうが月2.1万円高いという結果です。「リモートは単価が下がる」という通説とは逆になっています。

理由は需給で説明がつきます。リモートで完結できる案件は、発注側が高い自律性と実績を要求するため、応募できる人が絞られます。単価が高いのは働き方への対価ではなく、求められる水準が高いことの反映です。この構造はFLR-29(フルリモート案件を獲得する方法)で詳しく扱います。

稼働|平均135.4時間と、月商の振れ幅

月労働時間135.4時間という数字

マイナビ調査によれば、ITエンジニア系フリーランスの平均月労働時間は135.4時間です。

比較対象月労働時間年換算
フリーランス(実額平均層)135.4時間約1,625時間
会社員(法定内・残業ゼロ)約160時間約1,920時間
会社員(月15時間残業)約175時間約2,100時間

残業月15時間の会社員と比べると、年間で約475時間——8時間換算で約59日分少ない計算になります。

この数字は2通りに読めます。「働く時間を自分で減らせている」とも、「働きたくても仕事がない時間がある」とも読めます。そしておそらく、両方が混ざっています。次の振れ幅のデータが、その混ざり方を示します。

振れ幅は、平均月商とほぼ同じ大きさ

同じマイナビ調査で、月収の振れ幅が出ています。

指標金額
月収が高い時57.0万円
月収が低い時12.8万円
振れ幅(高い時 − 低い時)44.2万円
参考:実額平均年収526.3万円 ÷ 1243.9万円

ここに、この記事で一番効く数字があります。振れ幅44.2万円は、平均月商43.9万円とほぼ同額です。

つまり平均的なフリーランスエンジニアは、自分の平均月商と同じくらいの幅で、毎月上下していることになります。会社員の給与でこれが起きたら、家計は成立しません。

低い月の金額として最も多かった回答は「0円」(32.4%)

振れ幅の下端は12.8万円という平均値ですが、回答の分布を見ると「0円」が32.4%で最多でした。約3人に1人が、収入がまったくない月を経験しています。

これは「稼げないフリーランス」の話ではありません。案件の切れ目は、単価の高低にかかわらず発生します。契約終了と次の参画のあいだに1ヶ月の空白ができれば、その月の売上は0円です。月単価100万円の人にも起きます。

平均年収526.3万円という数字は、この0円の月を含んだうえでの平均値です。「平均的に毎月43.9万円入ってくる」という状態を指しているわけではありません。

稼働の切れ目が、年商のほぼすべてを決める

手取りの計算はFLR-26で詳しく扱っていますが、結論だけ再掲すると、手取りは単価ではなく年商で決まり、年商は「単価 × 稼働月数」で決まります

条件年商備考
単価60万円 × 12ヶ月720万円
単価80万円 × 9ヶ月720万円上と完全に同額
単価100万円 × 7ヶ月700万円単価が67%高くても年商は下回る

単価を60万円から80万円へ上げる交渉(33%アップ)と、年3ヶ月の空白を埋めることは、金額として完全に等価です。そして後者のほうが、たいていは実現しやすい。単価は市場と自分のスキルで上限が決まりますが、稼働の連続性は自分の段取りでかなりの部分が動きます

実態のデータが示しているのは、平均的なフリーランスエンジニアはこの段取りに失敗しているということです。6.7ヶ月分しか稼げていないという事実は、単価の問題ではなく稼働の問題です。

継続率|数字が存在しないという事実

何が分かっていないのか

本記事のタイトルには「継続率」を入れていますが、正直に書きます。フリーランスエンジニアの継続率を示す信頼できる統計は、現時点で存在しません。

存在しない理由は3つあります。

  • 廃業の定義が曖昧 — 案件が途切れて3ヶ月無収入の人は「廃業」か。会社員に戻ったが副業でフリーランスを続けている人はどちらか。定義が定まりません
  • 廃業届の提出運用が緩い — 個人事業の廃業届は提出義務がありますが、実務上、出さずに休眠する人が多数います。行政データから継続率を復元できません
  • 追跡調査が行われていない — 同一個人を複数年にわたって追跡するパネル調査が、この領域では実施されていません。単年のスナップショット調査しかありません

「1年で30%廃業」という数字を辿ると、どこにも着かない

の種の数字の出所を追うと、次のいずれかに行き着きます。

  • 中小企業白書の法人企業の生存率を援用したもの — これは法人の統計であり、個人事業主のフリーランスとは母集団が違います
  • 海外(主に米国のギグワーカー)調査の翻案 — 制度も市場構造も異なるため、日本の実態には使えません
  • 循環参照 — 記事Aが記事Bを引用し、記事Bが記事Cを引用し、記事Cが記事Aを引用している

本記事はこの数字を使いません。「継続率は不明である」と書くほうが、不確かな数字を書くより読者の判断に資するという立場を取ります。

代わりに使える、周辺の指標

継続率そのものは分かりませんが、継続の意思や環境を測った調査はいくつかあります。継続率の近似として、限界を明示したうえで使います。

指標出典何を示唆するか
正社員転向を検討している約25%ファインディ Findy Freelance調査(2026年1月/n=265)4人に1人が戻ることを考えている。ただし検討=実行ではない
前職が正社員だった84.2%マイナビ(2025年8月/n=1,000)大半が会社員からの転向者。現役層のなかでの比率であり、辞めた人は含まれない
社会保険に不安がある68.2%(安心6.7%)フリーランス協会 白書2026継続の障害として最も大きい要素。不安=離脱ではない
収入に不満46.8%(満足26.0%)連合 フリーランス調査2025(n=1,000)不満が満足を上回る。満足度と継続率の相関は測定されていない
本業フリーランスの人数209万3,700人(有業者の3.1%)総務省 令和4年就業構造基本調査母集団の規模。5年周期のため、次回はR9年調査

これらの指標は「継続率」ではない

上の表は継続率の代替であって、継続率そのものではありません。すべて現役フリーランスへの調査であり、既に辞めた人は回答者に含まれていません(生存者バイアス)。

たとえば「正社員転向を検討している人が25%」は、現役の4人に1人が検討中という意味であって、25%が来年辞めるという意味ではありません。検討したまま10年続ける人もいます。

この記事で言えるのは次の範囲までです。継続を脅かす要因は収入の不安定さ(振れ幅44.2万円・0円の月32.4%)と社会保険の不安(68.2%)に集中しており、それらへの対処が継続の実務的な条件になっている。 何%が何年続くかは、現時点のデータでは言えません。

参考:市場規模の側から見る

継続率の代わりに、市場全体のストックの動きを見る方法もあります。

  • 本業フリーランス209万3,700人(総務省・令和4年就業構造基本調査/有業者の3.1%)——これは定義の狭い、信頼度の高い数字です
  • フリーランス人口1,303万人・経済規模20.3兆円(ランサーズ実態調査2024年版)——ただしこちらは副業を含む最広義の定義で、209万人とは母集団が20分の1以下しか重なりません。2つを同列に並べる記事は定義を混同しています

就業構造基本調査は5年周期のため、次回はR9年(2027年)調査です。継続率の代理として最も信頼できる時系列は、この5年ごとの本業フリーランス人数の増減になります。ただしこれもストックの増減であって、個々人の継続率ではありません。

会社員と並べる|年収では下回り、時間単価では上回る

実態を判断材料に変えるには、比較対象が要ります。会社員と並べます。

年収(年商)年間労働時間時間単価
フリーランスエンジニア(実額平均)526.3万円約1,625時間約3,239円
正社員(民間給与実態統計・正社員平均)545万円約2,100時間(月175時間)約2,595円
正社員(同上・残業ゼロと仮定)545万円約1,920時間(月160時間)約2,839円

※フリーランスは月労働時間135.4時間×12ヶ月、正社員は月175時間×12ヶ月で算出。正社員側は国税庁「令和6年分 民間給与実態統計調査」の正社員平均給与545万円を使用

年収では18.7万円下回り、時間単価では約1.25倍という結果になります(残業月15時間の会社員と比較した場合)。

つまり実態としてのフリーランスエンジニアは、**「短く働いて、時間あたりでは少し多く稼ぎ、年収では会社員平均に届かない」**という位置にいます。

手取りベースで見ると、時間単価の優位もほぼ消える

上の比較は額面(年商)ベースです。フリーランスには給与所得控除がなく、社会保険料の労使折半もありません。本サイトの試算では、実額平均526.3万円の手取りは月29.3万円正社員平均545万円の手取りは月35.2万円でした。

これを時間単価に直すと次のようになります。

  • フリーランス:29.3万円 × 12 ÷ 1,625時間 = 約2,164円/時
  • 正社員(月175時間):35.2万円 × 12 ÷ 2,100時間 = 約2,011円/時
  • 正社員(月160時間):35.2万円 × 12 ÷ 1,920時間 = 約2,200円/時

残業のある会社員をわずかに上回り、残業ゼロの会社員をわずかに下回る——ほぼ互角です。

独立の金銭的な意味は「稼ぎが増えること」ではありません。平均で見るかぎり、金額はほぼ変わらず、変わるのは時間の配分を自分で決められることです。

平均で語れないのが、この職種の特徴

ここまでの比較はすべて平均値です。しかしフリーランスの収入分布は、会社員よりはるかに広がっています。月商の振れ幅が平均月商と同じ大きさである以上、「平均的なフリーランス」という人はほとんど存在しません

独立の判断で見るべきなのは平均との比較ではなく、自分が分布のどこに入る見込みがあるかです。それを決めるのは主にスキル・経験年数と、稼働を切らさない段取りの2つです。

市場の現在地|案件は減り、単価は上がり、リモートは希少枠に

掲載案件数は12.0%減、リモート案件は17.2%減

市場そのものの動きを実数で見ます。

2025年4月2026年6月増減
掲載案件数(全体)463,542件408,133件−12.0%
リモート案件比率33.6%31.6%−2.0pt
リモート案件の実数(比率から算出)約155,750件約128,970件−17.2%
常駐案件の実数(同上)約307,792件約279,163件−9.3%

※リモート・常駐の実数は掲載案件数×比率で算出した推計値です。原典は比率のみを公表しています

比率で見ると「33.6%→31.6%で2ポイント下がっただけ」に見えますが、実数で見るとリモート案件は17.2%減っています。全体の減少率12.0%、常駐の減少率9.3%と比べて、リモート案件のほうが速く減っているという構図です。

レバテックのITフリーランス市場動向(2026年6月時点)も、フルリモート案件のシェアは約30%で「働き方の二極化」が進んでいると報告しています。

手取りベースで見ると、時間単価の優位もほぼ消える

上リモート案件は常駐より月2.1万円高く(79.6万円 vs 77.5万円)、しかも実数では17.2%減っている。この2つが同時に起きているのが2026年の実態です。

値段が高くて数が減っているものは、経済的には希少枠です。「リモートで働きたい」という条件を持って独立するなら、その枠を取りに行く前提の準備が要ります。単に登録して待っていれば回ってくる案件ではなくなりました。

本メディアでは、主要エージェントのリモート求人比率を月次で定点観測しています。

AI関連は3.1倍。単価にも差が出ている

縮んでいる市場のなかで、明確に伸びている領域があります。

  • AI・DX関連案件は直近1年で約3.1倍(レバテック ITフリーランス市場動向/2026年6月時点)
  • コードの50%以上をAIで生成している層は、活用度25%以下の層より月単価が約10万円高い(ファインディ Findy Freelance調査/2026年1月・n=265)

月10万円は年間120万円の差です。単価交渉で20万円上げるより、AIツールの使い込みで10万円分の差がつくほうが、実現の道筋が見えやすいという見方もできます。

ただしこの調査はn=265と標本が小さく、因果は特定されていません。「AIを使うと単価が上がる」のか、「単価の高い層が新しいツールを早く取り入れる」のかは、このデータからは区別できません。相関として読んでください。

実態を、自分の条件に置き換える手順

平均値は自分の数字ではありません。本記事のデータを自分の判断に変換する順序を示します。

最大の分岐は、ステップ③とQ1です。 ここで稼働月数を何ヶ月と置くかによって、以降の年商・手取り・生活設計のすべてが動きます。単価の見積もりを1割誤っても年商は1割しか動きませんが、稼働月数を12ヶ月と置くか9ヶ月と置くかでは、年商が25%変わります。見積もりの精度を上げるべきなのは単価ではなく稼働月数のほうです。

なお、未経験の場合の「9〜10ヶ月」という仮置きに統計的な裏付けはありません。実額平均は6.7ヶ月分ですが、これは稼働率の低い層を含む全体平均のため、そのまま初年度の前提に置くと保守的すぎます。両者のあいだを取った実務的な目安として読んでください。

Q2の「0円の月が2〜3ヶ月」という設定には根拠があります。 低い月の金額として「0円」を挙げた人が32.4%と最多だったこと、振れ幅が44.2万円で平均月商43.9万円とほぼ同額だったことの2点です。この水準の変動は例外ではなく、平均的な姿として観測されています。

この図に「継続率」の分岐がないのは意図的です。 本記事で述べたとおり、継続率・廃業率の信頼できる統計は存在しません。判断フローに組み込めるだけの根拠がないものを、それらしい分岐として置くことはしていません。

この手順で出るのは「独立すべきかどうか」の答えではなく、判断に必要な数字が揃ったかどうかです。揃わない項目が残ったなら、そこが独立前に埋めるべき準備の中身になります。

よくある質問

フリーランスエンジニアの平均年収はいくらですか?

ITエンジニア系フリーランスの実額平均年収は526.3万円です(マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2025年版」/2025年8月・n=1,000)。よく見かける「平均単価78.5万円」は求人プラットフォームの掲載案件の平均値札であり、12倍した942万円が年収になるわけではありません。526.3万円は掲載単価の6.7ヶ月分にあたります。なお国税庁の民間給与実態統計調査による正社員の平均給与は545万円で、フリーランスの実額平均はこれをやや下回ります。

平均単価78.5万円と平均年収526.3万円は、なぜこれほど違うのですか?

3つの要因が重なっています。第一に、掲載単価は「60〜90万円」のようなレンジ表示の上側で集計されやすいこと。第二に、稼働月数が12ヶ月に満たないこと。第三に、平均月労働時間が135.4時間とフルタイム換算(160時間)の84.6%にとどまることです。特に大きいのは稼働で、月収が低い時の金額として「0円」を挙げた人が32.4%と最多でした。案件の切れ目は単価の高低にかかわらず発生します。

フリーランスエンジニアの継続率・廃業率はどのくらいですか?

信頼できる統計は存在しません。フリーランスの継続を追跡した公的統計は日本にはなく、Web上で流通している「1年で30%廃業」といった数字は一次ソースを特定できません。多くは法人企業の生存率の援用、海外調査の翻案、あるいは記事同士の循環参照です。本記事はこの種の数字を使いません。代わりに、正社員転向を検討している人が約25%(ファインディ/n=265)、社会保険に不安を感じる人が68.2%(フリーランス協会白書2026)といった周辺指標を示していますが、これらは現役フリーランスへの調査であり、既に辞めた人は含まれていない点に注意が必要です。

月収の振れ幅はどのくらいありますか?

月収が高い時57.0万円、低い時12.8万円で、差は44.2万円です(マイナビ)。実額平均年収526.3万円から逆算した平均月商43.9万円と、ほぼ同じ大きさの幅で毎月上下していることになります。さらに、低い時の金額として最も多かった回答は「0円」で32.4%でした。約3人に1人が収入のまったくない月を経験しています。独立前の資金計画では、平均月商ではなくこの振れ幅を前提に置いてください

フリーランスは会社員より稼げますか?

平均値で比べるかぎり、稼げません。実額平均526.3万円は正社員平均545万円を下回ります。手取りに直すとフリーランス月29.3万円、正社員月35.2万円です(FLR-26の試算)。ただし労働時間が違います。時間単価では、フリーランス約3,239円に対して残業月15時間の会社員が約2,595円で、フリーランスが約1.25倍。手取りの時間単価で比べるとフリーランス約2,164円、会社員約2,011〜2,200円でほぼ互角です。金額はほぼ変わらず、変わるのは時間の配分を自分で決められる点だと考えるのが実態に近いです。

平均月労働時間135.4時間というのは、働きすぎではなく余裕があるということですか?

両方の要素が混ざっています。自分で稼働量を調整している人と、案件がなくて稼働できていない人が同じ平均に含まれます。低い時の月収が「0円」という回答が32.4%あることを考えると、後者の比率は小さくありません。「フリーランスは労働時間が短い」という説明を額面どおりに受け取らず、稼働の切れ目を含んだ数字として読んでください。

フリーランスの案件数は減っているのですか?

減っています。掲載案件数は463,542件(2025年4月)から408,133件(2026年6月)へ12.0%減少しました。一方で平均単価は74.6万円から78.5万円へ上昇しています。単価上昇は個人の報酬が上がった結果とは限らず、低単価案件が市場から消えた結果としても説明がつきます。実際、連合調査では「報酬が引き上げられていない」と答えた人が89.8%でした。

リモート案件は増えていますか、減っていますか?

減っています。リモート案件比率は33.6%(2025年4月)から31.6%(2026年6月)へ低下しました。掲載案件数の減少と掛け合わせると、リモート案件の実数はおよそ155,750件から128,970件へ17.2%減った計算になります。全体の減少率12.0%、常駐の減少率9.3%より速いペースです。ただし単価はリモート79.6万円、常駐77.5万円でリモートのほうが高く、値段が高くて数が減っている希少枠という状態にあります。

リモートのほうが単価が高いのはなぜですか?

働き方への上乗せではなく、求められる水準の反映と考えるのが自然です。リモートで完結する案件は発注側が高い自律性と実績を求めるため、応募できる人が絞られます。結果として単価が押し上がります。「リモートを選べば単価が上がる」という因果ではないため、実績が不足している段階でリモート限定に絞ると、案件の母数を大きく減らすことになります。

AIを使うと単価は上がりますか?

相関は出ています。ファインディの調査(2026年1月・n=265)では、コードの50%以上をAIで生成する層は、活用度25%以下の層より月単価が約10万円高いという結果でした。またAI・DX関連案件は直近1年で約3.1倍に増えています(レバテック)。ただしn=265と標本が小さく、因果は特定されていません。「AIを使うから単価が上がる」のか「単価の高い層が新しいツールを早く取り入れる」のかは、このデータからは区別できません。

独立してから会社員に戻る人はどのくらいいますか?

実際に戻った人の比率を示す統計はありません。分かっているのは、現役フリーランスのうち正社員転向を検討している人が約25%だということです(ファインディ/n=265)。ただしこれは検討中の比率であり、実行率ではありません。検討したまま長く続ける人もいます。なお現役層の前職正社員率は84.2%(マイナビ)で、大半が会社員からの転向者という構成です。

フリーランス人口は1,000万人以上いると聞きましたが、本当ですか?

定義次第です。ランサーズの実態調査2024年版では1,303万人・経済規模20.3兆円としていますが、これは副業を含む最広義の定義です。一方、総務省の令和4年就業構造基本調査による本業フリーランスは209万3,700人(有業者の3.1%)で、6分の1以下になります。この2つを同列に並べている記事は定義を混同しています。「フリーランスエンジニアとして独立する」という文脈で比較対象にすべきは、後者に近い母集団です。

この記事のデータで、独立の可否は判断できますか?

判断の材料にはなりますが、それだけでは決められません。平均値はあくまで分布の中心であり、月商の振れ幅が平均月商と同じ大きさである以上、「平均的なフリーランス」に該当する人はほとんどいないためです。自分がどこに入る見込みかを決めるのは、スキル・経験年数と稼働を切らさない段取りです。

まとめ

フリーランスエンジニアの実態|要点

  1. 掲載単価78.5万円は値札であって、入ってくる額ではない — 実額平均年収526.3万円は、掲載単価の6.7ヶ月分
  2. 平均月労働時間は135.4時間 — フルタイム換算の84.6%。年間で会社員より約475時間(59日分)少ない
  3. 月商の振れ幅44.2万円は、平均月商43.9万円とほぼ同額 — 自分の平均月商と同じ幅で毎月上下している
  4. 低い月の金額として「0円」が32.4%で最多 — 案件の切れ目は単価の高低にかかわらず起きる
  5. 継続率・廃業率の信頼できる統計は存在しない — 「1年で30%廃業」は一次ソース特定不可。近似できるのは正社員転向検討25%・社会保険への不安68.2%などの周辺指標まで
  6. 年収では下回り、時間単価では上回り、手取り時間単価ではほぼ互角 — 独立で変わるのは金額ではなく時間の配分
  7. 市場は縮んでいる — 掲載案件数12.0%減、リモート案件は実数で17.2%減。リモートは高くて少ない希少枠
  8. AI関連は例外的に伸びている — 案件約3.1倍、AI活用度が高い層は月単価が約10万円高い(相関であり因果ではない)

    この記事のデータを並べると、フリーランスエンジニアという働き方は「稼げる」でも「稼げない」でもなく、振れ幅が大きいという一語に集約されます。

    高い月は57.0万円、低い月は0円。年間の稼働は6.7ヶ月分。平均年収は正社員平均をわずかに下回り、時間単価では上回る。継続できるかどうかは、統計としては誰にも分かっていません。

    この振れ幅を前提にすると、独立の準備でやるべきことは自動的に決まります。振れ幅の下側で生活が止まらないようにすることです。具体的には3つです。

    • 生活防衛資金を、平均月商ではなく「0円の月」を基準に積む
    • 案件が切れてから探し始めない段取りを、独立前に作る
    • 社会保険と税の固定費を、独立初年度分まで含めて把握しておく

    そして最後に、この記事で最も強調しておきたいことを繰り返します。掲載単価78.5万円を12倍した数字を、独立後の年収として計画に入れないでください。 実態は6.7ヶ月分です。この補正を最初に入れておけば、独立後に驚くことはかなり減ります。

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