在宅勤務しやすいIT職種ランキング

この記事の結論

  • 在宅しやすさは職種だけでは決まらない。「職種 × 業種 × 契約形態」の3層で決まる
  • 正社員の職種別テレワーク実施率は、コンサルタント62.2%/IT系技術職58.3%。正社員全体の22.5%に対し2〜3倍で、IT職は構造的に有利
  • ただしフリーランス案件のリモート比率は31.6%。正社員で在宅しやすい職種が、業務委託でも在宅しやすいとは限らない
  • 在宅しにくい職種にいるなら、職種を変える前に業種を変えるほうが効き目が大きい
  • 単価と在宅しやすさは比例しない。常駐77.5万円 vs リモート79.6万円で、むしろリモートのほうが高い

「在宅で働きたいならエンジニアになればいい」という言い方をよく見かけます。方向としては間違っていませんが、粗すぎます。同じ「エンジニア」でも、Web系事業会社のバックエンド開発と、金融系の客先常駐運用保守では、在宅で働ける確率がまったく違うからです。

この記事では、IT職種を10種に分けて「在宅のしやすさ」をランキング化します。ポイントは、正社員としての在宅しやすさと、フリーランス案件としての在宅しやすさを分けて評価すること。この2つは一致せず、職種によっては順位が逆転します。

前提:在宅しやすさは3層で決まる

第1層|職種の差は、全体平均の2〜3倍

パーソル総合研究所「第十回・テレワークに関する調査」(2025年7月時点、正社員ベース)によれば、正社員全体のテレワーク実施率は22.5%。これに対して職種別では次のようになっています。

職種テレワーク実施率(正社員)
コンサルタント62.2%
IT系技術職58.3%
企画・マーケティング49.6%
(正社員全体)22.5%

同調査で注目すべきは、「Webクリエイティブ職」「広報・宣伝・編集」「営業推進・営業企画」「資材・購買」の実施率がこの2年で大きく減少している点です。「クリエイティブ職は在宅」という2020年代前半の常識は、すでに崩れています。減っていない領域と減った領域を分けているのは、職種名ではなく「その人の代わりがどれだけ効かないか」です。

第2層|業種の差は、職種の差よりさらに大きい

総務省「令和7年通信利用動向調査」(2025年8月末時点)の産業別テレワーク導入率は、**情報通信業92.8%に対し、運輸業・郵便業32.5%。国土交通省「令和7年度テレワーク人口実態調査」でも、情報通信業の雇用型テレワーカー割合は74.1%**で全業種トップ、最下位の宿泊業・飲食業は6.0%でした。パーソル総研の業種別でも情報通信業56.3%が最上位です。

数字の水準は調査によって違いますが、どの調査でも情報通信業が突出しているという結論は共通しています。

ここから導かれる実務的な示唆は、次の一点です。

職種を変えるより、業種を変えるほうが早い

同じ「バックエンドエンジニア」でも、Web系事業会社にいるか、金融系SIerの客先常駐にいるかで在宅可能性は大きく変わります。転職でスキルを一から積み直すより、同じ職種のまま情報通信業側へ移るほうが、在宅比率への効き目は大きく、時間もかかりません。

第3層|契約形態でも景色が変わる

フリーランス側も見ておきます。エン・ジャパン『フリーランススタート』の定点調査(2026年6月度・掲載案件408,133件)では、リモート案件の掲載比率は31.6%。2025年4月の33.6%から緩やかに低下しています。レバテックのITフリーランス市場動向(2026年6月時点)も、フルリモート案件のシェアを約3割と分析しています。

つまり、フリーランスになれば自動的にフルリモートになる、という前提は成り立ちません。案件の約7割は常駐または一部出社を含みます。

ランキングの評価軸

本ランキングは特定の一次調査の順位ではなく、次の4軸を合成した編集部評価です。各軸5点満点、合計20点で採点しています。

評価軸見ているもの
①成果物の切り出しやすさ仕事の結果がコード・設計書・デザインデータなど「物」で残るか。残るほど在宅で評価されやすい
②物理制約の少なさ現地の機器・実機・専用端末・データセンターへの物理アクセスが必要か
③常駐要求の受けにくさ金融・官公庁など、セキュリティ要件から出社を求められる比率
④リモート枠の母数そもそもリモート求人・リモート案件の絶対量があるか

数字の裏付けがある部分(職種別実施率・単価・案件比率)は本文で明示し、それ以外は実務上の構造から評価しています。このランキングは「調査結果」ではなく「判断の補助線」として読んでください。

在宅勤務しやすいIT職種ランキング TOP10

順位職種正社員フリーランス最大の制約
1位バックエンド/Webアプリエンジニア★★★★★★★★★☆SIer側は常駐が残る
2位SRE/クラウドインフラエンジニア★★★★★★★★★☆オンプレ運用は出社必須
3位フロントエンドエンジニア★★★★★★★★★☆単価の下押し圧力
4位データ/機械学習・AIエンジニア★★★★☆★★★★☆データ持ち出し制限
5位モバイルアプリエンジニア★★★★☆★★★☆☆実機検証・端末管理
6位QA・テストエンジニア(自動化領域)★★★★☆★★★☆☆手動テストは出社寄り
7位UI/UXデザイナー・Webデザイナー★★★☆☆★★★★☆実施率が2年で大幅減
8位PM・PdM・エンジニアリングマネージャー★★★☆☆★★☆☆☆マネジメントは出社要求が強い
9位ITコンサルタント・上流SE★★★★☆★★☆☆☆正社員と業務委託で逆転
10位社内SE・情シス/運用保守・ヘルプデスク★★☆☆☆★☆☆☆☆物理的な現地対応

以下、それぞれの理由を見ていきます。

1位|バックエンド/Webアプリケーションエンジニア

4軸すべてで高得点になる、最も安定した選択肢です。成果物がコードとして残り、レビューも非同期で完結する。物理的に現地でしかできない作業がほとんどない。そして何より、リモート求人・リモート案件の絶対量が最も多い

ただし同じ職種名でも、Web系事業会社と金融系SIerでは景色が違います。前者は原則リモート、後者は客先常駐が前提というケースが今も普通にあります。職種で選んだあと、必ず業種と契約形態で絞り込むこと。

2位|SRE/クラウドインフラエンジニア

「インフラ=現地作業」というイメージは、クラウド前提の環境ではほぼ過去のものです。Infrastructure as Codeが定着した現場では、構成変更もデプロイもコードで完結し、監視・アラート対応もリモートで行えます。

一方で、オンプレミス環境の運用や物理サーバの保守が残っている現場では、この職種の在宅適性は一気に落ちます。求人票で見るべきは職種名ではなく、扱う環境がクラウドかオンプレか。ここが分岐点です。

3位|フロントエンドエンジニア

成果物が画面としてそのまま見えるため、リモートでの評価が最もしやすい職種のひとつです。デザイナーとの協業もFigma等で非同期化が進んでいます。

懸念は在宅のしやすさではなく単価です。生成AIによる実装支援が最も効きやすい領域であり、コーディング比率の高い案件から順に価格圧力がかかります。ファインディの調査(2026年1月、n=265)では、コードの50%以上をAI生成する層は活用度25%以下の層より月単価が約10万円高いという結果が出ています。AIを使う側に回れるかどうかが分かれ目です。

4位|データエンジニア・機械学習/AIエンジニア

需要面では最も追い風が吹いている領域です。レバテックの市場動向によれば、AI・DX関連案件は直近1年で約3.1倍。フリーランススタートの2026年6月度でも、職種別の最高単価は「AIエンジニア(人工知能)」の198万円でした。

在宅適性を下げる唯一の要因は、扱うデータの持ち出し制限です。個人情報・医療データ・金融データを扱う案件では、VDI経由での作業や執務室内作業を求められることがあります。案件選定時に「データへのアクセス方法」を必ず確認してください。

5位|モバイルアプリエンジニア

基本的にはリモートで完結しますが、実機検証と検証端末の管理という物理要素が残ります。端末を貸与して自宅で検証させる企業も多く、正社員では大きな壁になりません。

フリーランス案件では評価がやや下がります。端末の貸与・管理コストを嫌って、常駐を条件にする発注元が一定数あるためです。

6位|QA・テストエンジニア(自動化領域)

テスト自動化・CI基盤側の仕事であれば、バックエンドに近い在宅適性があります。逆に、手動テストや実機を並べた検証が中心の現場では出社前提になりやすい。同じQAでも自動化側かどうかで在宅可能性が変わる、二極化の激しい職種です。

7位|UI/UXデザイナー・Webデザイナー

成果物が明確でリモート適性は高いはずの職種ですが、パーソル総研の調査で**「Webクリエイティブ職」の実施率がこの2年で大きく減少**しています。理由は、制作進行の同期性(レビュー・すり合わせの頻度)と、事業会社側の出社回帰方針が重なりやすいこと。

興味深いのは、業務委託側のほうがリモート適性が高い点です。成果物単位での契約になじむため、雇用よりも委託のほうが在宅で完結させやすい。デザイン職で在宅を最優先するなら、雇用形態そのものを検討対象に入れる価値があります。

8位|PM・PdM・エンジニアリングマネージャー

単価は高い職種です。dodaの平均年収ランキング2025ではプロジェクトマネジャーが707万円。フリーランススタートの2026年6月度でも、職種別平均単価はエンジニアリングマネージャーが2位に入っています。

ただし在宅適性は別問題です。パーソル総研の調査では、テレワークの困りごとのうち**「部下の仕事の様子がわからなくなった」(上司回答)だけがこの2年で増加傾向**にあります。マネジメント側の不安が解消されていない以上、マネジメント職ほど出社を求められやすい構造が続きます。フリーランス案件ではさらに厳しく、ステークホルダー調整を伴うPM案件は常駐条件が多くなります。

9位|ITコンサルタント・上流SE

このランキングで最も評価が割れる職種です。パーソル総研の職種別実施率では「コンサルタント」が62.2%で全職種トップ。正社員としては最も在宅しやすい部類に入ります。

ところがフリーランス案件になると評価が反転します。フリーランススタートの2026年6月度で職種別平均単価1位はコンサルタントの107.3万円(5ヵ月連続上昇)ですが、要件定義や関係者調整を含む上流工程は、発注側が対面での稼働を求めやすい領域です。単価は最上位、在宅しやすさは中位以下という組み合わせになります。

10位|社内SE・情シス/運用保守・ヘルプデスク

PCのキッティング、ネットワーク機器の交換、オフィスでのトラブル対応。物理的に現地でしか完結しない業務が仕事の中核にあるため、在宅化の余地が構造的に小さい職種です。

求人票に「リモート可」と書かれていても、実態は「障害がなければ在宅」であるケースが多く、週の在宅日数が読めません。この職種で在宅を優先するなら、情シス業務のうちSaaS管理・セキュリティ運用・社内システム開発といったリモート化しやすい領域に軸足を移すのが現実的です。

番外|組込み・制御系エンジニア

実機・評価ボード・検査装置が必須で、在宅適性はIT職種の中で最も低い部類です。一方で人材の希少性が高く単価も安定しているため、「在宅」を捨てて「単価と安定」を取る選択も合理的です。すべての職種が在宅を目指す必要はありません。

正社員とフリーランスで順位が逆転する職種

このランキングで最も実務的に効くのが、この逆転です。

職種正社員での在宅しやすさフリーランス案件での在宅しやすさ逆転の理由
ITコンサル・上流SE高い(実施率62.2%)低い発注側が対面での関与を求める
PM・EM中程度低いマネジメントは信頼の蓄積が前提
UI/UXデザイナー低下傾向高い成果物単位の契約になじむ
バックエンド開発高い高いどちらでも成果物で評価できる

一般化すると、「関係者との調整量が多い職種ほど、業務委託になると在宅しにくくなる」という法則です。雇用関係があれば信頼は日常の積み重ねで作られますが、業務委託では初期の信頼構築コストを対面で払わされやすい。独立を検討している人ほど、この差を織り込んで職種を選ぶ必要があります。

在宅しにくい職種にいる人の3つの打ち手

今いる職種が下位だった場合の選択肢は、次の3つです。難易度の低い順に並べています。

打ち手1|職種を変えず、業種を移る

最もコストが低く、効果が大きい選択です。スキルの積み直しが不要で、業種差(情報通信業92.8% vs 全業種平均50.1%)がそのまま在宅可能性の差になります。運用保守でも、事業会社の自社サービス運用に移れば在宅比率は上がります。

打ち手2|職種内で領域をずらす

QAなら手動テストから自動化へ。インフラならオンプレからクラウドへ。情シスならヘルプデスクからSaaS管理・社内システム開発へ。職種名は変えずに、その職種の中でリモート化しやすい領域に移るやり方です。社内異動で実現できることも多く、転職より現実的な場合があります。

打ち手3|隣接職種へ移る

最も時間がかかりますが、天井は高い選択です。運用保守からSRE、手動QAからテスト自動化、社内SEからバックエンド開発。いずれも既存の業務知識が活きるルートです。実務経験3年以上が目安になります。

在宅しやすさと単価は比例しない

最後に、意外に誤解されている点を確認しておきます。リモート案件だから単価が安い、ということはありません。

フリーランススタートの2026年6月度では、常駐案件77.5万円に対しリモート案件79.6万円。2.1万円ぶんリモートのほうが高いという結果でした。リモート案件が減っているのは価格が理由ではなく、発注側のマネジメント都合です。

一方で、額面の単価と実際の年収は別物です。同じ2026年6月度の平均月額単価は78.5万円ですが、マイナビ「フリーランスの意識・就業実態調査2025年版」によるITエンジニア系フリーランスの平均年収は526.3万円。稼働率、空白期間、社会保険の全額自己負担が差を生みます。月収は高い時57.0万円/低い時12.8万円で、低い時が「0円」だった人が32.4%と最多でした。

職種選びの結論

在宅しやすさで職種を選ぶのは合理的ですが、それだけで選ぶと単価と安定性を落とします。「在宅しやすさ」「単価」「案件の母数」の3つを同時に見るのが正解です。3つとも上位に来るのは、バックエンド/SRE/データ・AI系の3領域です。

よくある質問

未経験から在宅しやすい職種を狙うなら、どれがいいですか?

未経験でいきなり在宅を狙うのは、遠回りになります。リモート求人・リモート案件は「自律的に動ける人」を前提に設計されており、教育コストのかかる未経験者はまず対象外になるためです。現実的な順序は、①出社前提でもいいのでIT職種で実務経験を積む、②情報通信業の事業会社へ移る、③在宅比率を上げる、の3段階です。職種としてはバックエンド開発が案件量の面で最も入りやすい選択になります。

インフラエンジニアは在宅できないと聞きましたが本当ですか?

扱う環境によります。クラウド前提でIaCが定着した現場であれば、構成変更も監視対応もリモートで完結します。逆にオンプレミスの物理サーバ保守が中心なら在宅は困難です。求人票では職種名ではなく、AWS/GCP/Azureなどのクラウド名とIaCツール名が書かれているかを確認してください。

在宅しやすい職種ほど単価は低いのですか?

いいえ。2026年6月度の調査では、常駐案件77.5万円に対しリモート案件79.6万円とリモートのほうが高い結果でした。ただし職種別に見ると、単価上位のコンサルタント(107.3万円)やエンジニアリングマネージャーは、在宅しやすさでは中位以下になります。単価と在宅しやすさは、比例も反比例もしません。

フリーランスになればフルリモートで働けますか?

自動的にはなりません。フリーランス案件のリモート掲載比率は31.6%(2026年6月度)で、レバテックの分析でもフルリモートのシェアは約3割。約7割の案件は常駐または一部出社を含みます。フルリモートは希少枠として取りにいく前提で動く必要があります。

社内SEから在宅しやすい職種へ移るには何から始めるべきですか?

いまの業務のうち、リモートで完結している部分を洗い出すのが出発点です。SaaSの権限管理、社内システムの改修、セキュリティ運用などが該当します。そこに業務時間を寄せていき、実績ができた段階で社内異動または転職を検討する順序が、最も失敗が少ない設計です。

AIの普及で、在宅しやすい職種の順位は変わりますか?

順位そのものより、単価の分布が変わりつつあります。AI・DX関連案件は直近1年で約3.1倍に増え、コードの50%以上をAIで生成する層は月単価が約10万円高いという調査結果もあります。実装量で評価される仕事ほど価格圧力を受け、設計・意思決定・データ活用の比重が高い仕事ほど単価が維持される、という方向です。

まとめ

在宅しやすいIT職種の選び方

  1. 3層で判断する。職種(IT系技術職58.3% vs 全体22.5%)→ 業種(情報通信業92.8%)→ 契約形態(リモート案件31.6%)の順に絞る
  2. 職種を変える前に業種を変える。同じ職種のまま情報通信業へ移るのが最短ルート
  3. 正社員とフリーランスで順位は逆転する。調整量の多い職種ほど、業務委託になると在宅しにくくなる
  4. 職種内の領域ずらしが最もコストが低い。手動QA→自動化、オンプレ→クラウド、ヘルプデスク→SaaS管理
  5. 在宅・単価・案件量の3つで選ぶ。3つとも上位はバックエンド/SRE/データ・AI系

在宅で働けるかどうかは、才能でも運でもなく、置かれた構造の問題です。構造が分かれば、変えられる部分と変えられない部分も分かります。まずは自分の職種・業種・契約形態の3つを紙に書き出して、どれが一番動かしやすいかを見極めるところから始めてください。

関連記事